I congratulate you on the birthday of MOKUBA

 

 

 
When You WishUpon a Star
 
「なんかオマエ願い事ってないの?欲しいものとかさ」
 客間でゴロゴロしながら一緒にオセロをしてた城之内が、急にそんなことをいうからビックリした。
「それはオレの欲しいモノ?それとも城之内でも買えるもの?」
 真顔でそう言うと城之内は顔を引きつらせる。
「……おまえら兄弟はそーゆー口のへらねぇところが腹立つくらいそっくりだな」
 喩え皮肉めいた口調でも、兄サマに似てると言われるんならあんまり悪い気はしない。
「だって城之内甲斐性ないからさー」
 そんな風に笑うといきなり起きあがった城之内に背中から脇の下をくすぐられた。
「かわいくねーことばっかいうガキは、こうだ!」
「ぎゃー!やめろっバカッ!!」
 城之内の腕の中でバタバタと暴れてるうちに緩んだ腕からスルッと床の上に抜け落ちる。
「いってー!」
 思いっきり膝を打ったオレがわめくと、城之内はオレを両手で持ち上げるみたいにソファーの上に座らせた。
「大丈夫か?」
「……痛くて死にそうだぜぃ」
 打った膝をマッサージしながら、城之内が困ったような顔をする。
「あのさぁ。本当になんかねぇの?欲しいもの」
 なんでそんなにしつこく食いついてくるんだろう?と思った瞬間、部屋の隅に置かれた笹を見て、あっ!と思った。そういえばアレは城之内が持ってきたんだ。
「それって明日が七夕だからか?」
 クスクスと思わず笑みが漏れる。もう分かってしまった。七夕はオレの誕生日だ。
「なんだよ。気がついたか。」
 照れくさそうに、城之内が笑う。商店街で分けて貰ったという笹を今日こいつが持って来た時に気がつくべきだった。
「で、何が欲しいんだよ?」
 ちょっと照れくさそうに笑う城之内を見て、思わずちょっと本音を口にしてしまう。
「じゃあ明日を雲ひとつない晴れの日にしてくれよ」
 記憶のある限り、誕生日はいつも曇り空。
 すっきりと晴れたことなんてただの一度もなかったんだ。誕生日の天気なんて、って言われるかもしれないけど、365日のうちで一番その天候に意味がある日に生まれたから。
「ああ?」
 首を傾げる城之内に溜め息混じりに目を細める。
「それって織り姫と彦星を逢わせてやれってこと?」
 そんな仕草が城之内の目にはしょげたみたいに映ったのか、小さい子にするみたいに頭をクシャクシャと撫でられた。
「だって毎年雨なんて意地が悪いぜぃ」
 本当の七夕は旧暦の八月だから、今の暦になぞらえた七月七日が梅雨のまっ直中なんてのは当たり前なのは承知の上でそう思う。
「おまえはいい子だな」
 城之内はそれだけ言うと、部屋の隅に置きっぱなしにしてあった笹をソファーのところまで持ってきた。
「色紙も買ってきてやったから、七夕飾りでも作ろうぜ。一緒に短冊に明日晴れるように書いてやるよ」
 そう言って笑う城之内に、晴れて欲しいと願う本当の理由は結局言えず仕舞いだった。
 
* * *
 
 久し振りに子供の頃の夢を見た。
 城之内と七夕飾りを作ってるうちに眠くなったから、(もう眠い)と言ったらしょうがねぇなと笑いながらオレのベットまで運んでくれた。
 夢見心地で、(じゃあ笹はここに置いてくからな)と城之内が言うのを聞いた気がする。
 あんな夢を見たのは、枕元で笹がサワサワと鳴っていたせいかもしれない。
 
 オレと兄サマの本当の父サマがまだ生きていた頃。忙しかった父サマが、オレ達と遊びに連れて行ってくれるのは誕生日だけだった。
 うん、そうだ。最後のオレの誕生日もやっぱり雨で、楽しみにしてた遊園地に行けなくなって、朝からシクシクと泣いては兄サマと父サマを困らせたんだっけ。
 
「来年は晴れるように一緒に願おうな」
 
 兄サマはそう言ってくれたけど、オレ達に父サマと一緒の来年は来なかった。
 あれからずっと誕生日の度に祈ってみるけれど、結局雨が降らなかったことがないんだ。綺麗に晴れた記憶がない。毎年毎年遊園地に行けない子供が自分の中にポツンと取り残されている。苦い思い出。
 
 なんだかあまりに哀しくなって、目が覚めてしまった。
 薄暗がりのベットの脇に、エアコンの風に吹かれてサワサワと鳴る笹の葉が目に入る。それを見た瞬間、思わず声に出して笑ってしまった。
 
「……城之内らしいぜぇ(笑)」
 
 色とりどりの七夕飾りや短冊が揺れる中に、違和感いっぱいに吊されていたのは、小さなてるてる坊主だった。しかも三白眼の目が描いてる変な顔の。(これが兄サマだっていうなら後でアイツ、スゲー怒られると思う……)
 
 オレはクスクスと布団を被ったまま笑ってたけど、そのうちなんだか明日こそは晴れるような気がしてきた。
 もし明日晴れたら、兄サマに「遊園地に行こう」って言おう。海馬ランドの新しい絶叫マシーンに乗りたいって我が侭を言ってみよう。そうだな。気が向いたら、城之内も呼んでやってもいい。そしたら無理矢理アイツの苦手なお化け屋敷に引きずり込んでやるんだ。
 
 明日晴れたら             
 
 あの小さい子供の頃みたいにワクワクした気持ちで、小さく手を合わせて祈るみたいにして、オレはゆっくりと目を閉じると甘い眠りについた。
 

 

 
the end



 2003.7.7