「兄サマ。美味しい?」
小さな弟が一生懸命手を伸ばして、社長室のデスクに腰掛けた俺の口元に届くようにとハンバーガーを差し出した。
別にそれをあいつがモクバに預けたから口にするわけではない。食べなければモクバが悲しむから食べるだけだ。大体、ファーストフードなんて好きじゃない。何の肉を使っているか判らないようなものが自分の身体の一部になるなんて耐え難いのに。
俺は軽いため息をついて、それに噛みついた。
あいつの小さな手は、愛しい弟のそれといつもダブって見える。
ハンバーガーの包みを両手で差し出したモクバの手首をぎゅっと掴んで、もう一口、と歯形をつけた。
まぁたまに食べるのなら、こんな庶民の粗食もいいのかもしれないな、と考える あの屈託のない甘い笑顔を思い出しながら。